【小浜市長無投票4選】問題の根本は、市議会にある。議員はなぜ首長選挙を嫌うのか?

2020年8月3日付 日刊県民福井記事より
2020年8月3日付 日刊県民福井記事より

以前から指摘し続けていた首長の無投票&多選の問題。福井県では小浜市と池田町の首長選において無投票・多選が続く。民主主義の質から言えば最悪だ。

 

しかし、私は小浜市長の松崎氏をそんなに批判する気にはなれない。法律で多選が禁止されていない以上、松崎氏は立候補し続けても全然問題はない。むしろ問題は、対抗馬が一向に現れないという現状である。これは結局のところ議会に問題があると私は思っている。自治体の民主主義の成熟度は首長よりも議会に表れているといっていいくらいだ。首長選挙に比べ、議会選挙は「死に票」が少ない。9割以上の有権者の投票が当選者の票になっているため、有権者の民意を代弁しやすい。

 

小浜市議会議員の数は18人。18人のうち1人ぐらいは現職に対して挑みかかる議員がいてもいいはずだが、何をしているのだろうか。2000万近くの退職金をもらう福井県内の首長さんは、対抗馬が現れないことをいいことに、なるべく長く首長をやろうとする。しかし、だいたいどこも、人気があるから再選されているわけではなさそうだ。それなのに現職に対して議員が挑む構図は意外と少ない。

 

現職首長に対して対抗馬が出てくることは、市政・町政全体のことを考えると非常に大切だが、議員側は相当腹をくくる必要がある。現職は強いといわれるが必ずしも人気があるわけではない。首長はいろんな方面から圧力を受けて政策を実行しているので、議員側はいろいろツッコミを入れられるはずなのだが。また、不利な戦いの中で頑張る気概を有権者は見てくれていると思うので、本来市政を間近で観察してきた議員の中から対抗馬が出てくるべきなのだ。

 

鯖江市長選挙も今3候補が出そろっているが、現職の牧野百男氏が引退表明をしてから雪崩を打ったように3候補が出馬表明した。3人ともそれだけ現職に挑戦したくはなかったのだろう。現職首長側もこういった議員の弱みを知っているので、平気で多選を続けてくるのだ。

 

理由は大きく分けて3つ。

① 首長選に出て落選すると、議員報酬がもらえなくなる

② 初めから首長を目指すつもりがない議員の存在

③ 圧倒的な存在感の自民党による候補者調整

 

① 首長選に出て落選すると、議員報酬がもらえなくなる

議員が首長選に出ると当然議員の身分が失われ、議員報酬も貰えなくなる。議員報酬を生活費に充てている議員が多いため、現職の対抗馬になりたがらない。すぐ議会選がある所(永平寺町、大野市、越前市)は、議員が首長選に出やすいが、同日選(福井県、坂井市、敦賀市、越前町、美浜町)だったり、首長選の前に議会選があったりする(福井市、あわら市、高浜町等)と、落選すれば浪人期間が長くなる。すると、議員は自民党のミコシに乗らない限り首長選挙に出るのを嫌がる。

 

首長選挙から議会選の期間

(議員が首長選挙に負けた時の浪人期間。長ければ長い程議員が出にくい)

 

4年0か月(同日選) 福井県、敦賀市、坂井市、若狭町、越前町

3年8か月 福井市

3年4か月 あわら市

3年0か月 高浜町

2年11か月 美浜町

2年10か月 鯖江市

2年9か月 小浜市、勝山市

2年3か月 池田町

1年3か月 南越前町

1年1か月 おおい町

0年8か月 大野市、越前市

0年5か月 永平寺町

 

 

県内の地方議員の議員報酬は、月額で言うと

福井県 78万

福井市 63万

敦賀市 40.7万

鯖江市 40.7万

坂井市 40万

越前市 38.7万

大野市 35.7万

あわら市 35万

小浜市 35万

勝山市 35万

池田町 26.5万

美浜町 24.5万

越前町 24万

若狭町 23.5万

おおい町 23.5万

高浜町 23.5万

南越前町 22.6万

永平寺町 22万

 

これを15倍すると年収になるが、これを失うのは議員として結構痛いものがある。議員の責任は首長程重くはなく、年4回の議会日程3,6,9,12月を乗り切れば後は何をやっても(しなくても)自由なのだ。

 

② 初めから首長を目指すつもりがない議員の存在

地元の人ならだれもが知る「ヤルキナイ」議員の存在。ただ期数を重ねるだけの議員は少なくない。責任の重い首長にはならずに、議員で期数を重ねる人は多い。そんな人が首長選挙で現職に挑むことは決してないだろう。市町の議会選挙はそもそも難易度が低い。一般市民が気軽に出馬できるような制度設計なのだが、議員を目指す福井県民の数は少なく、マタお前かよ的な選挙結果が続き有権者を白けさせる。

 

③ 圧倒的な存在感の自民党による候補者調整

自民党による候補者調整もある。そもそも福井県は自民党以外に存在感のある政党がない。公明や共産は率先して首長を狙ってはこない。各市町議会の議員の半数以上は自民党籍を持っていると思われる。そうなると、首長選挙においても候補者調整で選挙前に自民党の神輿候補が決められてしまう。神輿に担がれたい首長候補が大勢いるが、当選枠1の首長選挙に1つの政党が2つの神輿を担ぐことはない。

 

このように、福井県内の政治・選挙の低迷が地方の活力を削いでいることは否めない。選挙の無投票・現職多選が続く限り、有権者の前で率直な政策論争が行われることはないからだ。とはいえ、一般民間人がいきなり首長選挙となると(何度も言うがミコシに乗らない限り)ハードルが高い。様々な人材が議員を目指し、首長を目指す…そういった流れを作らなければ福井県はまず発展していかないだろう。