【雑感:勝山市長選】松村治門氏が勝つために必要だったスローガン

勝山市長選が終わった。いわゆる、既得権益側の勝利だった。選挙は候補者を眺めていてもよく分からない。候補者の後ろに誰がいるか、で候補者そのものの本質がわかるのだ。水上陣営の後ろにいた人たち、県内の首長や県選出の国会議員の面々を見ていると、誰が福井県を支配しているかがよく分かる。我々はしっかりと自民党の政治エリートによって効果的に統治されているのだ。日本、特に田舎では選挙はあるものの自民党一党体制であることには変わらない。どこかの共産国と同じような構図で政治・選挙が行われているのだ。残念ながら、長年このような政治を受け入れてきた有権者によって支えられてきた構図ともいえる。

 

対抗馬の松村陣営はどうだったか。見たところ個人で草の根民主主義を演出した選挙戦を展開していたように思う。そこに期待をかけた有権者も一定数いたのは確かだ。勝山市内を3年かけて3週半回った、ということを売りにし、TV報道でもそのことについて言及していた。そこで松村氏が有権者に対して語ったメッセージは何だったか。ホームページやTV出演では、十分に伝わらなかった。理由は、話の内容が難しかったからである。昔流行ったワンフレーズポリティクスだったらよかったのである。

 

多くの候補者はろくに政策を語らず「よろしくお願いします」と言って回るだけである。または、理屈っぽい候補者なら、(例えば、弁護士出身など、松村氏も行政書士なので一生懸命政策論を語った。)延々と政策を語る。しかし、それでは有権者の琴線に響いていないようなのだ。すると、選挙において政策は重要ではない!?

 

なぜなら、戸別訪問は政策をいちいち語っていると時間を食ってしまい、政策をいちいち説明していると更に時間ばかりが過ぎていく。私も各家庭を回り人々と話して感じることだが、一部のインテリ系を除く有権者のほとんどはそれほど政策について関心を持っていないように思える。にもかかわらず、政治に対するモヤモヤ感や不信感を抱く人は多い。なぜか?日本の有権者は一体何を求めているのだろう?何を候補者の口から聞きたいのだろうか?

 

2005年郵政解散、2008年政権交代、2017年小池フィーバーになぜ有権者が興奮したのか。この3つの共通点は何か?それは「自民党をぶっこわす」だろう。小泉元首相が叫んだことだが、2008年に鳩山元首相が、2017年小池知事がやろうとしたことと同じである。結果、自民党はぶっこわれてはおらず、後に勢力を盛り返すことになったが、それでも当時の有権者はいそいそと反自民票を投票箱の中に入れた。第一、自民党の総裁が自民党をぶっこわす、と叫んでも普通なら国民は訝しがるはずだ。しかし、拉致被害者帰国(2002年)以降、人々は政権中盤(2003年~04年)には大して功績のなかった小泉氏に熱狂した。有権者は四の五の政策を聞きたいのではない。旧い自民党一党体制をぶっこわしてほしいのだ。

 

最近では「NHKをぶっこわーす」というのがあったが、NHKがあのような形で多くの矛盾を抱えた組織である理由は、結局のところ自民党がNHKを改革してこなかったからである。N国党党首の立花さんはNHKではなく「自民党をぶっこわーす」と言えばもっと選挙で議席が増えるのである。

 

日本は民主主義国と言っても、我が国の有権者には3つの弱点があり、政治家側もそれはよく掴んでいる。

①公務員や自営業者:政治活動をすると仕事に悪影響を及ぼす。

②インテリ層や市民活動家:面倒な選挙に出たがらない。つまり楽な評論家のままでいたい。

③一般の有権者:政治と行政は自民党・お役人にお任せ…といった依存心に囚われている。

 

この3つの弱点によって、福井県の政治は与党自民党の政治エリート達によって寡頭政治が出来上がってしまった。①②③がやりたくてもできないことを、選挙や政治活動の時に大声で叫ぶ候補が有権者の心を掴むと言えよう。逆に言えば、今回松村さんは勝山市長選挙に先立ってこれが出来ていなかったのでは、と推測する。「自民党をぶっこわーす!」とか、

「市長の退職金を廃止しまーす!」など

自分の生活に忙しい有権者が0.1秒で理解でき、停滞感の根本の原因をズバリ指摘する野党が必要なのだ。長年与党でやってきた自民党が推す候補や、現職後継の役人系候補には組織はあるが、問題点の指摘はシガラミがあって絶対にできない。そんな人物では首長になれても大した改革などできやしないのだ。

 

市内を3週半回ってもなぜ市長になれなかったのか?

前回選挙に比べなぜ票数を落としてしまったのか?

 

松村陣営の手法や態度・振る舞いといった細かな欠点が根本の原因だとは思わない。

水上陣営の組織が打ち破れない壁であったとも思わない。むしろ自民の組織票は「はりぼて」に過ぎず、実際は見掛け倒しであると私には思える。

 

今、日本に、福井県に必要なのは自民党の矛盾を上手につくことができるスーパー野党である。今の野党はそれがあまり上手くない。が、決して難しいことではない。やるか、やらないか、それだけなのだ。松村氏にはいつか再決起し、議会選挙等に挑戦して頂ければと思う。